――― 女の表情が変わる
息を紡ぐために開いた口は閉じる事無く、洩れる吐息はたまらなく甘い。
「ジャック、下がっていい」
忠実な部下は、私の命令が聞こえているのだろうが、その目はまるで私を射殺すかのように睨みつけたままだ。
「ジャック、聞こえないのか」
返事の代わりに、彼の心を音で表しているかのように壁を拳で叩く音が響いた。
だが"いつもの彼女"であれば、すぐに振り返るが、今の彼女にはそんなものも、耳には届かないようだ。
「出て行かないならば、そこで見ていても私は一向に構わないよ」
「…ぁ…」
軽く頬に触れただけで洩れる、この国の誰も聞いたことがないであろう甘美な声。
意志に反し、求め続ける身体の苦しみから、自然と溢れ出した涙を指で拭い、それをそっと自らの唇に乗せる。
…甘い、な
踵を合わせた音が聞こえると同時に、足早に部屋を飛び出して行った男がひとり。
「やれやれ…少々刺激が強かったか」
喉の奥で出て行った男の心情を笑い、意識を目の前の女へ戻す。
「…さて、。これで邪魔者はいなくなった」
「っ…ぅ……はぁ…」
「さぁ、どうして欲しい」
自らの内から溢れ出る何かを抑えこむよう、ベッドで丸まっている彼女の背にそっと触れる。
「きみは私の命令を破った。ならば、罰を受けなければならない」
「っぁ…」
「そのまま耐えるもよし…楽になりたいのならば、求めればいい」
――― 私が欲しい、と…
そのまんま、お題利用。
とりあえず、命令か約束を破ったお仕置き的な感じ。
ドSな女王様に本領発揮して貰った…そして、相変わらず不憫なジャック。
2010/06/16